ベネディクト16世

私の為にその白い扉は開けられた 


ベネディクト16世はそこにいて私を静かに迎え入れてくれた 
表情は上手く読み取れない 

白を基調としたその部屋は心を落ち着かせ、大きな一枚ガラスの向こうの緑は私を安心させた 

そこに並べられた椅子は心地良さそうな背もたれがあり、きっと私をそこにとどめるのに充分な役割を果たすだろう 


白服の優しいそうな女性が近づいて来て、その椅子へ座るよう促した…やはり素晴らしい心地よさだ。これから起こるコトなど微塵も感じさせないほどに 


緑の庭では小さな虫が鳥に追われている 
私を安心させた緑 
弱肉強食…食うか食われるか 


以前ある人に言われた 
弱肉強食の世界ならお前は優しすぎるから、獲物を他人に譲って死んでしまうか、獲物を殺せずに死ぬんだろうな…と。 
私はそれでいい。それが私で、それが私の持つ時間なのだろうから。 



時はくる 

椅子に沈み込んだ私の顔に、小さな4つの電球から光が当てられ、私は自然と目をつぶった。 
未知の時間が始まる… 
何かが行われ、何かが終わった 
何も感じない 

目を開けた私に 
女性は後について来るよう告げた 
名残惜しいが立ち上がりついて行った 

連れていかれたのは小さな部屋、不思議な機械が置かれた小さな部屋 
私はその機械の中心に立たされた 


あの椅子に戻りたい 

身につけている物を外すよう言われ、私は首からかけていた小さな輪の付くチェーンを外し渡した 
機械が頭の周りを不快な音を立てながら動いていく… 

一回りしたところでまたあの椅子に戻るコトを指示された 


椅子に戻った私に彼は告げる 
今日は一つと… 
彼は不思議な薬を与えた 

私は外していた輪を握りしめた 
不安な時にしているように、きつくキツく握りしめた 


彼が私に触れたのを感じた 
頭の中でミシミシという音が聞こえる…普段聞くコトのない音。 
不快な音が頭に響く。 


あの虫はどうしただろうか 
自然の摂理…生命の為に命を落としたのだろうか 
それとも自分の時間を守ったか 


どれくらい経っただろうか、 
彼が離れたのが分かった 
薬はまだ切れていない 
やはり何も感じない。 
でもコトは終わったようだ 
握りしめた輪を元の場所へ戻した 
安心を取り戻した 






ベネディクト16世は医療器具… 
治療用の椅子^ - ^ 
ローマ法王の名前でこの法王が使っていた形と同じことからついたらしい。 
親不知…なんてやつだ。 


上の二本は何事も無く抜歯。
明日横に生えた下の親知らずを抜きます…